桜の花の満開の下の、私たちの終わり

その人と最後に会ったのは、満開の桜の花の下でした。
彼は私と一緒にいながらも、誰か別の人のことを考えていました。それは口に出されなくても当然、私に伝わってきます。そのことに彼は気づいていなかったようです。

まず、私が素敵だよと言った日比谷公園の夜桜を見に行ったのです。
桜は7分咲きでした。
周りの人々も私も、その可憐な姿をうっとりと見上げていましたが、彼は言いました。
「まだ全部咲いてへんな。他いこ。」そして彼は私を赤坂の桜坂へと連れて行きました。

この時、別れの予感はすでにしていたのです。

移動の間、いつもつないでいる手を差し出してはくれませんでした。
桜坂へ着くと、彼は言いました。「やっぱり、さっきのよりこっちのほうが素敵やな。」

彼は自分のデジカメで桜を写してばかりいました。
一人で来ればよかったんじゃない?
私は、そう何度も言いかけて、辞めました。

周りには、仕事帰りと思しきサラリーマン達のグループや、楽しげに写真を撮り合うカップル。ですがそんなカップル達を見ても、私はうらやましいとも思いませんでした。
それよりも、「なぜ私は今夜ここに来てしまったのだろう?」「なぜこの人と桜を見ているのだろう?」そんなことばかり考えてしまっていました。